特許分類付与基準
2009年 07月 17日
以前、調査で拾われたノイズ公報2件:
公報A)
【公開番号】特開2003-200898
【発明の名称】航空機墜落防止方法、ならびに、航空機用パラシュート、ならびに、飛行機ハイジャック激突テロ防止システム、ならびに、コンデンサ、ならびに、真空生成方法、ならびに、ヘッドマウントディスプレイシステム、ならびに、鏡、ならびに、テフロン(R)加工食器、ならびに、磁気テープデバイスアクセス高速化方法、ならびに、光ファイバー、ならびに、光通信システム、ならびに、個人情報送信システム、ならびに、伸縮補助定規付きハンディスキャナーシステム、ならびに、微細加工方法、ならびに、微細加工装置、ならびに、姿勢制御方法、ならびに、プロジェクションテレビ、ならびに、電子レンジ、ならびに、コンパクト無人ATM設置方法、ならびに、
【国際特許分類第7版】
B64D 17/00
【FI】
B64D 17/00
公報B)
【公開番号】特開2003-228017
【発明の名称】ヘッドマウントディスプレイシステム、ならびに、フェイスマウントディスプレイシステム、ならびに、立体映像表示システム、ならびに、中が真空である容器を生成する機器、ならびに、中が真空である容器の生成方法、ならびに、微細加工方法、ならびに、微細加工装置、ならびに、光ファイバー、ならびに、光通信システム、ならびに、揚水装置、ならびに、揚水方法、ならびに、踏み切りカウンターシステム、ならびに、ホルムアルデヒド除去器、ならびに、コンピュータ用CDドライブシステム、ならびに、映像を映写する時に用いるスクリーン、ならびに、プロジェクションテレビ、ならびに、映写システム、ならびに、映写方法、ならびに、USBオーディオシステム、ならびに、遺伝子異常に由来する病気と疾患の治療方法、ならびに、遺伝子異常に由来する病気と疾患の治療装置、ならびに、宇宙用ロケット制御方法、ならびに、宇宙用ロケット制御装置、ならびに、微細立体構造物製造方法、ならびに、病気治療用ロボット。
【国際特許分類第7版】
G02B 27/02, G02B 27/22, H04N 5/64 511
【FI】
G02B 27/02 Z, G02B 27/22, H04N 5/64 511 A
公報Aの方は、発明の名称が尻切れトンボですが、引用ミスではありません。本当にこのような名称なのです。もっとも、公報には所定欄に記載しきれなくて、どちらも途中で途切れてしまっています。フロントページの情報が多すぎて記載しきれない場合、最終ページに「フロントページの続き」というのが記載されますが、そういったケースというのは発明者や出願人が大人数に上るとか、代理人が大勢だとか、分類がたくさん付与されているためなのであって、この公報のように長大な発明の名称が最終ページにまわされているのなんて、初めて見ました。
それにしても、とても盛りだくさんのタイトルですね。請求項の数を見ると、公報Aが96個、公報Bが54個で、公報のページ数は公報Aが29ページ、公報Bが18ページです。です。請求項数はさすがですが、その割に明細書は長くはないようです。
もし審査請求されたら、間違いなく37条(発明の単一性)で拒絶されそうな気がしますが、それよりも私の興味をひいたのは、特許分類です。盛りだくさんな割に、少ない分類しか付与されていません。これはどういうことなのでしょう?もしかして、盛りだくさんなのは発明の名称だけで、明細書には偏りがあって、詳細に記載された発明と、クレームだけされた発明とがあったりするのかしら?
公報Aを見ると、付与されている分類は
B64D17/00 パラシュート
で、これは発明の名称の「航空機墜落防止方法、ならびに、航空機用パラシュート、ならびに、飛行機ハイジャック激突テロ防止システム」くらいまでを1グループとすれば確かに全明細書中でのこの分野の比重は大きくなりますが、他の発明と比較してより詳細に説明されているわけでもありません。
公報Bに付与されている分類は
G02B27/02 ・観察または読取装置 < 光学装置
G02B27/22 ・立体視または他の3次元効果を生ずるもの
H04N5/64 511 ・・・小型TV(ポ-タブル) < 受信機の構造の細部
H04N5/64 511 A ヘツドビユア-(Head viewer)型TV
で、公報A同様、この技術分野だけを注目する理由はよく分かりません。
万万が一、その他の発明に関する記載が、特許法上の発明の定義に当てはまらなかったり、実施可能要件を満たしていなかったり、記載不備だったりするとしても、ではこれらの公報が先行技術文献として有効でないかといえば、実は私はそうは思いません。なぜならば、その文献に少なくとも「出願当時のニーズ・ウォンツ」「課題解決願望」が記載されている以上、他の文献との組み合わせによって進歩性を否定する論理づけの根拠となり得ると考えるからです。
(この文献にしか書かれていないニーズや課題解決願望なんてないだろうからサーチで拾われなくても実害はないよ、と言われてしまえばそれまでなのですが。。。)
「分類不能」という扱いならまだしも納得しやすいけれど、この中途半端(?)な付与の仕方は、うーん、IPCCの分類付与技術者さんは、どういう判断でこの分類を付与したのでしょう?興味津々です。
「分類不能」に分類された公報に「特表2005-507228:フィールドコンバータ」がありますが、WO公報や他の外国ファミリーにはちゃんと「H02N1/00; H02N11/00; H02N1/00」等のIPCが付与されていて、EP公報にはECLA、USにはUSclass.も付与されていますし、(国によって特許要件が違うとはいえ)登録になった国もあるのです。なぜ日本だけが…ますます不思議。
こうなってくると、分類付与の基準というものを明確に知りたくなってくるのですが、いわゆる分類付与マニュアルは一般に公開されておらず、IPCC門外不出のようです。審査基準や審査便覧のように、特許庁で公開してくれればいいのになぁ。あー、IPCCに潜り込んでみたいっ!
*-*-*-*-*
おまけ
*-*-*-*-*
HYPAT-iによれば、現時点で「分類不能」に分類された公報は、
2008年で18件、2007年で23件、2006年で29件、2005年で33件
です。
分類検索は網羅的だと思われがちですが、これらの公報が漏れるという意味では、完璧ではありません。もちろん、「『分類不能』に分類された公報なんて、大した内容を開示しているはずがないから、漏れちゃってもいいのだ」というアプローチは、有りだと思います。私は…無効化資料調査だったら、念のため拾ってきたい思います。ノイズはちょっと増えるかもしれませんが、調査漏れに比べたら大した害にもならなかろうというのが理由です。
公報A)
【公開番号】特開2003-200898
【発明の名称】航空機墜落防止方法、ならびに、航空機用パラシュート、ならびに、飛行機ハイジャック激突テロ防止システム、ならびに、コンデンサ、ならびに、真空生成方法、ならびに、ヘッドマウントディスプレイシステム、ならびに、鏡、ならびに、テフロン(R)加工食器、ならびに、磁気テープデバイスアクセス高速化方法、ならびに、光ファイバー、ならびに、光通信システム、ならびに、個人情報送信システム、ならびに、伸縮補助定規付きハンディスキャナーシステム、ならびに、微細加工方法、ならびに、微細加工装置、ならびに、姿勢制御方法、ならびに、プロジェクションテレビ、ならびに、電子レンジ、ならびに、コンパクト無人ATM設置方法、ならびに、
【国際特許分類第7版】
B64D 17/00
【FI】
B64D 17/00
公報B)
【公開番号】特開2003-228017
【発明の名称】ヘッドマウントディスプレイシステム、ならびに、フェイスマウントディスプレイシステム、ならびに、立体映像表示システム、ならびに、中が真空である容器を生成する機器、ならびに、中が真空である容器の生成方法、ならびに、微細加工方法、ならびに、微細加工装置、ならびに、光ファイバー、ならびに、光通信システム、ならびに、揚水装置、ならびに、揚水方法、ならびに、踏み切りカウンターシステム、ならびに、ホルムアルデヒド除去器、ならびに、コンピュータ用CDドライブシステム、ならびに、映像を映写する時に用いるスクリーン、ならびに、プロジェクションテレビ、ならびに、映写システム、ならびに、映写方法、ならびに、USBオーディオシステム、ならびに、遺伝子異常に由来する病気と疾患の治療方法、ならびに、遺伝子異常に由来する病気と疾患の治療装置、ならびに、宇宙用ロケット制御方法、ならびに、宇宙用ロケット制御装置、ならびに、微細立体構造物製造方法、ならびに、病気治療用ロボット。
【国際特許分類第7版】
G02B 27/02, G02B 27/22, H04N 5/64 511
【FI】
G02B 27/02 Z, G02B 27/22, H04N 5/64 511 A
公報Aの方は、発明の名称が尻切れトンボですが、引用ミスではありません。本当にこのような名称なのです。もっとも、公報には所定欄に記載しきれなくて、どちらも途中で途切れてしまっています。フロントページの情報が多すぎて記載しきれない場合、最終ページに「フロントページの続き」というのが記載されますが、そういったケースというのは発明者や出願人が大人数に上るとか、代理人が大勢だとか、分類がたくさん付与されているためなのであって、この公報のように長大な発明の名称が最終ページにまわされているのなんて、初めて見ました。
それにしても、とても盛りだくさんのタイトルですね。請求項の数を見ると、公報Aが96個、公報Bが54個で、公報のページ数は公報Aが29ページ、公報Bが18ページです。です。請求項数はさすがですが、その割に明細書は長くはないようです。
もし審査請求されたら、間違いなく37条(発明の単一性)で拒絶されそうな気がしますが、それよりも私の興味をひいたのは、特許分類です。盛りだくさんな割に、少ない分類しか付与されていません。これはどういうことなのでしょう?もしかして、盛りだくさんなのは発明の名称だけで、明細書には偏りがあって、詳細に記載された発明と、クレームだけされた発明とがあったりするのかしら?
公報Aを見ると、付与されている分類は
B64D17/00 パラシュート
で、これは発明の名称の「航空機墜落防止方法、ならびに、航空機用パラシュート、ならびに、飛行機ハイジャック激突テロ防止システム」くらいまでを1グループとすれば確かに全明細書中でのこの分野の比重は大きくなりますが、他の発明と比較してより詳細に説明されているわけでもありません。
公報Bに付与されている分類は
G02B27/02 ・観察または読取装置 < 光学装置
G02B27/22 ・立体視または他の3次元効果を生ずるもの
H04N5/64 511 ・・・小型TV(ポ-タブル) < 受信機の構造の細部
H04N5/64 511 A ヘツドビユア-(Head viewer)型TV
で、公報A同様、この技術分野だけを注目する理由はよく分かりません。
万万が一、その他の発明に関する記載が、特許法上の発明の定義に当てはまらなかったり、実施可能要件を満たしていなかったり、記載不備だったりするとしても、ではこれらの公報が先行技術文献として有効でないかといえば、実は私はそうは思いません。なぜならば、その文献に少なくとも「出願当時のニーズ・ウォンツ」「課題解決願望」が記載されている以上、他の文献との組み合わせによって進歩性を否定する論理づけの根拠となり得ると考えるからです。
(この文献にしか書かれていないニーズや課題解決願望なんてないだろうからサーチで拾われなくても実害はないよ、と言われてしまえばそれまでなのですが。。。)
「分類不能」という扱いならまだしも納得しやすいけれど、この中途半端(?)な付与の仕方は、うーん、IPCCの分類付与技術者さんは、どういう判断でこの分類を付与したのでしょう?興味津々です。
「分類不能」に分類された公報に「特表2005-507228:フィールドコンバータ」がありますが、WO公報や他の外国ファミリーにはちゃんと「H02N1/00; H02N11/00; H02N1/00」等のIPCが付与されていて、EP公報にはECLA、USにはUSclass.も付与されていますし、(国によって特許要件が違うとはいえ)登録になった国もあるのです。なぜ日本だけが…ますます不思議。
こうなってくると、分類付与の基準というものを明確に知りたくなってくるのですが、いわゆる分類付与マニュアルは一般に公開されておらず、IPCC門外不出のようです。審査基準や審査便覧のように、特許庁で公開してくれればいいのになぁ。あー、IPCCに潜り込んでみたいっ!
*-*-*-*-*
おまけ
*-*-*-*-*
HYPAT-iによれば、現時点で「分類不能」に分類された公報は、
2008年で18件、2007年で23件、2006年で29件、2005年で33件
です。
分類検索は網羅的だと思われがちですが、これらの公報が漏れるという意味では、完璧ではありません。もちろん、「『分類不能』に分類された公報なんて、大した内容を開示しているはずがないから、漏れちゃってもいいのだ」というアプローチは、有りだと思います。私は…無効化資料調査だったら、念のため拾ってきたい思います。ノイズはちょっと増えるかもしれませんが、調査漏れに比べたら大した害にもならなかろうというのが理由です。
by hemp-vermilion | 2009-07-17 17:42 | 知財いろいろ