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丸投げしない特許調査…では日本のクライアントは?

前回書いた「外国からのちょっと変わった調査依頼」。

私が担当する調査業務は、その半数以上が外国のクライアントからの依頼によるもの(入社同時は9割9分までが外国クライアントからの依頼)なので、ついつい外国からの調査依頼に目が行きますが、日本の企業や特許事務所が外国の特許文献を調査しようと思ったら、どうしているのでしょう?現地の調査会社に丸投げ?それとも自分で調査しちゃう?

「外国」というのが1カ国なのか複数国なのか、無効化資料調査なのか侵害予防調査なのか等々によって、使用するデータベースも調査方法も異なってきますから一概にはいえませんが、日本にいながらにして各国の特許情報にアクセスできる機会がどんどん増えていることは事実です。

例えば、すでに1カ月ほど前になりますが、Dialog特許データベースに中国特許全文データベース「Chinese Patents Fulltext(ファイル 325)」が登場し、中国語特許公報の全文が英語で検索できるようになりました。これまでDialogにはChinese Patent Abstracts in English(ファイル344)はありましたが、全文が収録されているというのは画期的です。公報全文は機械翻訳で精度のほどは不明ですが、図面が収録され、出願人・発明者情報や法的状況データはマニュアル翻訳とのこと。OneSearchで両方のデータベースを指定して検索することもできますね。

ということは、キーワードを最小限に抑え、検索キーとして主に書誌事項を用いる検索であれば、かなり精度のよい検索ができそうです。ヒットした文献は機械翻訳とはいえ全文英語訳と図面とを表示できるのですから、精読してのスクリーニングも、結構いい線いくのではないでしょうか。

このように、発行言語以外の言語(主に英語)で公報全文データが収録されているデータベースが、他にもいくつかあります。外国の方が、日本のIPDLのPAJ検索で決して高品質とは言えない英抄や全文機械翻訳を相手にしていることに比べると、日本人が英語で英・米・仏・独・韓・中…の特許文献を検索する方がハードルは低そうです。

このようなデータベースが出現する前は、各国の特許文献調査は各国の調査会社へ依頼するのが、恐らく「餅は餅屋」的な感覚としても一般的であったかもしれません。ですが、このようなデータベースが出現した以上、「(書いたり喋ったりはともかく)英語ならなんとか読める」という人が、自分で検索・精読した方がコストもかからないという理由で各国への外注を抑制するようになる、というのは容易に想像できます。英語圏でない国の特許文献も、特に仏語・独語は機械翻訳であっても英訳の精度が比較的良いために、一次文献が英語以外の言語でも二次文献(データベース収録レコード)が英語であれば、ある程度のレベルの検索・精読が可能となり、結果、現地調査会社への「丸投げ」は、やはり減る傾向にあると思われます。

というような状況を考えると、外国のクライアントにとっても日本のクライアントにとっても、今後はサーチャーのスキルとして最低限、「英語ならなんとか読める」ことが求められることでしょう。そして、「何とか読める」ではなく「スムーズに読めて書ける」「日本語と同様に読み書きできる」ようになることが理想的。(ホントは喋れればもっといいことは間違いない。)

最近、社内公用語を「英語」にする、といったことが話題になっていますが、世界の公用語として業界を問わず英語はホントに習得必須ですね…(ため息)。

あとはやはり、クライアントからいかに調査の質に対する信頼を得るか、ということだと思います。「自分でもできるけどやっぱりプロに任せた方がいい結果が出る」と思ってもらえてこそ、調査をご依頼いただけるのではないかと。

とにかく早いとこ「英文特許公報と日本語特許公報の精読が同程度、というところまで行かなくては。英文を読む方が、どうしても時間がかかってしまいがちです。1件あたりの時間差はわずかでも、何百件、何千件と精読すれば、塵も積もって山となります。

日々是精進…

by hemp-vermilion | 2010-06-29 22:47 | 特許サーチ

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