これからの職業サーチャーに求められること
2009年 03月 07日
さて、昨日は「先輩サーチャーのお話」という趣旨のスピーチをさせて頂きましたので、どんなことをお話したのかこちらでも書いてみたいと思います。
テーマは、「職業サーチャーに求められること」です。
情報社会の発達により、今ではある意味誰もが「検索者」です。住む家も仕事も言葉の意味も乗る電車もインターネットで「検索」する時代になり、情報誌、求人誌、辞書、時刻表等の紙媒体を当たることは少なくなりました。それだけ、無料のデータベースが質・量ともに充実してきたと言えます。
これは特許調査においても例外でなく、以前は特許調査といえば経済産業省へ出向いて紙の特許公報を手めくりしたり、図書館で雑誌や書籍を手めくりしたりしていたのが、今や様々なコンピュータデータベースが出現し、無料のものも数多くあります。類似検索や概念検索といった検索機能では、特許分類やキーワードの使い方など知らなくても自然文で検索ができますし、出力結果解析もクリックひとつでできるデータベースもあります。
すると、サーチャーは何らかの「+α」を持って差別化を図らなければ、クライアントから信頼を得て重宝されるような仕事はできません。
では、これからの職業サーチャーに求められる「+α」とは何か?ということで、私が考える3点を挙げてみたいと思います。
◆「検索」だけでなく「調査」ができること
検索と調査は同じ意味で使われることもありますが、「検索」とは「調査」の一手段、一部分にすぎません。特に特許調査の場合、「何を(どのような文献を)見つけるか」をサーチャーが決めなければならないことが多く、この目標設定を誤ると、検索自体がどれほど良いものでも全体的に調査としては不成功となってしまいます。
例えば無効化資料調査のような先行技術調査の場合、どのような文献を見つければ対象発明の新規性・進歩性を否定できるかをサーチャーが考えなければならないような依頼が多く、ここで適切に目標文献の設定するためには、特許法、審査基準、判例等の知識が必要です。
そして、検索の結果、目標どおりの文献が見出せた場合はともかく、そうでない場合にはいくつかの文献を組み合わせて、対象発明の新規性・進歩性を否定する論理付けができそうな文献を選んで報告しなければなりません。ここでも、クライアントの審判戦略、訴訟戦略を理解してその方針に沿えるだけの特許制度に関する幅広い知識が必要になります。
侵害予防調査の場合でも、クライアント製品が権利範囲に含まれる可能性があるかどうかを判断しながらスクリーニングしなければならず、これは難しい上に責任超重大な作業です。最終的な判断は弁理士・弁護士にしかできませんが、彼らの目に触れる前にサーチャーが見逃してしまったら、調査の一切が無になります。
以上のように、特許調査においては特許制度全般に関する知識が不可欠であり、これなくしてはクライアントに信頼される仕事はできないと考えます。
◆見つけにくいものを見つけるための「知恵」を持つこと
上述したように、誰もが「検索者」である現在では、簡単に見つかる文献はわざわざ職業サーチャーに依頼したりしません。プのロサーチャーは、クライアント自身が手を尽くしても文献を見つけられなかったときの頼みの綱であり、この期待に応えなければなりません。このような時、単に検索者としての知識があるだけでは不十分で、時には発想の転換、常識を疑う等を試し、思考を柔軟にして経験を積み、その結果自分自身に蓄積される知恵を持つことが大事だと思います。
◆プロであることにこだわり過ぎないこと
どの分野でも、プロ中のプロが素人に負けることがあります。プロサーチャーが見つけられなかったものを、後で他人に、特にクライアント自身に簡単に見つけられてしまうと、クライアントの信頼を得ることができません。理論、理屈をこねまわさず、業界内の常識にとらわれすぎず、素直に直感的に接してみると、案外容易に見つかることもあるものです。プロである自覚・自信・誇りを持つことは良いことですが、プロならではの手法というものに捕らわれすぎると、時として素人には見えるものが見えなくなることがあります。私はこれを常に自分自身に戒めるようにしています。
以上3点が、私がこれからの職業サーチャーになくてはならぬと考えているポイントです。ご意見、ご批判、お叱り、もちろんご賛同も、いろいろお待ちしています。
テーマは、「職業サーチャーに求められること」です。
情報社会の発達により、今ではある意味誰もが「検索者」です。住む家も仕事も言葉の意味も乗る電車もインターネットで「検索」する時代になり、情報誌、求人誌、辞書、時刻表等の紙媒体を当たることは少なくなりました。それだけ、無料のデータベースが質・量ともに充実してきたと言えます。
これは特許調査においても例外でなく、以前は特許調査といえば経済産業省へ出向いて紙の特許公報を手めくりしたり、図書館で雑誌や書籍を手めくりしたりしていたのが、今や様々なコンピュータデータベースが出現し、無料のものも数多くあります。類似検索や概念検索といった検索機能では、特許分類やキーワードの使い方など知らなくても自然文で検索ができますし、出力結果解析もクリックひとつでできるデータベースもあります。
すると、サーチャーは何らかの「+α」を持って差別化を図らなければ、クライアントから信頼を得て重宝されるような仕事はできません。
では、これからの職業サーチャーに求められる「+α」とは何か?ということで、私が考える3点を挙げてみたいと思います。
◆「検索」だけでなく「調査」ができること
検索と調査は同じ意味で使われることもありますが、「検索」とは「調査」の一手段、一部分にすぎません。特に特許調査の場合、「何を(どのような文献を)見つけるか」をサーチャーが決めなければならないことが多く、この目標設定を誤ると、検索自体がどれほど良いものでも全体的に調査としては不成功となってしまいます。
例えば無効化資料調査のような先行技術調査の場合、どのような文献を見つければ対象発明の新規性・進歩性を否定できるかをサーチャーが考えなければならないような依頼が多く、ここで適切に目標文献の設定するためには、特許法、審査基準、判例等の知識が必要です。
そして、検索の結果、目標どおりの文献が見出せた場合はともかく、そうでない場合にはいくつかの文献を組み合わせて、対象発明の新規性・進歩性を否定する論理付けができそうな文献を選んで報告しなければなりません。ここでも、クライアントの審判戦略、訴訟戦略を理解してその方針に沿えるだけの特許制度に関する幅広い知識が必要になります。
侵害予防調査の場合でも、クライアント製品が権利範囲に含まれる可能性があるかどうかを判断しながらスクリーニングしなければならず、これは難しい上に責任超重大な作業です。最終的な判断は弁理士・弁護士にしかできませんが、彼らの目に触れる前にサーチャーが見逃してしまったら、調査の一切が無になります。
以上のように、特許調査においては特許制度全般に関する知識が不可欠であり、これなくしてはクライアントに信頼される仕事はできないと考えます。
◆見つけにくいものを見つけるための「知恵」を持つこと
上述したように、誰もが「検索者」である現在では、簡単に見つかる文献はわざわざ職業サーチャーに依頼したりしません。プのロサーチャーは、クライアント自身が手を尽くしても文献を見つけられなかったときの頼みの綱であり、この期待に応えなければなりません。このような時、単に検索者としての知識があるだけでは不十分で、時には発想の転換、常識を疑う等を試し、思考を柔軟にして経験を積み、その結果自分自身に蓄積される知恵を持つことが大事だと思います。
◆プロであることにこだわり過ぎないこと
どの分野でも、プロ中のプロが素人に負けることがあります。プロサーチャーが見つけられなかったものを、後で他人に、特にクライアント自身に簡単に見つけられてしまうと、クライアントの信頼を得ることができません。理論、理屈をこねまわさず、業界内の常識にとらわれすぎず、素直に直感的に接してみると、案外容易に見つかることもあるものです。プロである自覚・自信・誇りを持つことは良いことですが、プロならではの手法というものに捕らわれすぎると、時として素人には見えるものが見えなくなることがあります。私はこれを常に自分自身に戒めるようにしています。
以上3点が、私がこれからの職業サーチャーになくてはならぬと考えているポイントです。ご意見、ご批判、お叱り、もちろんご賛同も、いろいろお待ちしています。
by hemp-vermilion | 2009-03-07 19:04 | 特許サーチ