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ワークライフマネジメント特論3回目・4回目の感想

先週末は体調を崩して大学院もお休みしてしまい、更新が滞っている当blogですが、本日4回目の授業があり、2回分の感想をまとめて書いてみたいと思います。本当は、この授業に関すること以外にも書きたいことはあるのですが、どうにも私の体力限界を超えるので、優先順位をつけて、まずはワークライフバランスから。

前回の授業のテーマは「企業のワークライフバランス度をチェックする」で、ファミリー・フレンドリー施策の充実度と均等施策の充実度によって分けられるA~Dの4タイプについて学びました。

Aタイプ…本物先進ワークライフバランス企業
Bタイプ…モーレツ均等企業
Cタイプ…見せかけワークライフバランス企業
Dタイプ…20世紀の遺物企業

これだけで、何となくイメージが出来てしまいそうですが、どのタイプの企業なのかによって、ワークライフバランスの浸透に働きかける人と方法が異なるとのこと。

例えばBのタイプは機会は平等だけれど、裏返せば即ち、妊娠・出産・育児・介護その他の事情によって、これらの事情と無縁な社員と同等に働けなくなった社員が離職してしまう、その結果として、採用費・育成費に無駄が発生したり、残った均一な人材では多様化したニーズに応える商品・サービスが生み出せなかったり、といった不利益が発生する。

こうした企業の場合、社員がワーカホリックであったりするので、社員の意識を変えることが必要で、そのためには社員に対する啓蒙活動のほかに例えば評価の仕方を変えるなどする(制度だけ設けても有形無実のものになるため)。いくら「ノー残業デー」や「ナントカ休暇」のような制度を作ってみても、社員がワークライフバランスの重要性を理解して実践しない限り、それは会社の「押し付け」になり、結局社員の反発を招くだけになる。

一方、Dのタイプは中小零細企業などで今までワークライフバランス施策の必要性が薄かったり、両立支援や機会均等のための制度や環境の整備がされていないような企業。こういう企業は、トップ(オーナー)の意識を変えるだけで、いわゆるトップダウンでガラッと会社の方針を転換させることができる可能性が大きいので、経営者の意識改革から着手し、まずは制度面を整えて周知する、という方法を採る。

で、自分の会社を考えてみた場合、「Cタイプだなぁ」と思ったその理由は、
・育休等の制度面は整っていて、周知もされ、利用もされている。
・が、一方で経営層はそれに胡坐をかき、実際の制度利用に纏わる社員の不満に気付いていない。
・結果、若手や女性社員からはモチベーションの低下等が見られる。
からです。

こうしたタイプの企業は管理職の意識改革が大切だとのこと。確かに…それは納得です。

ですがここで疑問が湧いてきました。

Bタイプは底辺の一般社員を意識改革しなければならないとしても、その方法は啓蒙や評価方法の改正等トップダウンで進められるものです。Cタイプ、Dタイプはそれぞれ管理職や経営層の意識改革が必要なのだとすると、結局、変えるのはトップだということになります。

小室先生は当然企業からの依頼を受けてコンサルタントを行うのですから、企業が問題意識をすでに持っていることを前提としてトップダウンの提案で良いとしても、例えば底辺の一般社員がワークライフバランスに対してとても問題意識を持っていて、自分でも実行し、会社も変わって欲しいと思っている場合に、その社員はどのように会社に対して提案を行えばよいのか?ボトムアップで企業にワークライフバランス施策を導入しようとする場合のポイントは何なのか?ということです。

これについては、今日の授業で思い切って先生に質問をしてみました。先生によると、まず社内で有志によるワーキンググループを作り、徐々に大きくしていって、そのうち権限のある(特に女性)社員も巻き込んで、最終的に会社に対して提言をするところまで持って行く、という方法があるそうです。

その場合、他社で同じような活動をしているワーキンググループと交流を持つことによって、情報交換をしたりお互いにヒントを得たりすると良いとのこと。交流をする他者のワーキンググループは、自社と同じような規模や企業文化だと良いのかな?と思ったのですが、そのことはあまり関係なく、むしろ業種が近い企業を選ぶとよいとのことでした。

確かに、その業界(あるいは業種)に特有の事情やら問題点やらって、ありますものね。

ただ、会社に提言するに当たっては、まずは自分に一番近い上司に話を持って行って、例えその上司を説得できたにしても、その後にまだ「ボスキャラ」が控えていることを忘れてはいけません。その上司が、さらにその上司を説得し、結果として経営層を説得するところまでいかなくては、十分にワークライフバランス施策を導入することはできないということです。ですから、上司に提言・提案を行うときは、できるだけ具体的な数値データを挙げて説得力を上げ、さらにその上司がそのまた上司を説得するに役立つような話の運び方やデータの示し方までお膳立てしておくのが効果的。

前回の授業で、制度の利用にはある程度会社からの強制力がないと有形無実なものになってしまうように思う、と発言した学生に対し、先生が仰っていたのが、「強制力は確かに効果的な側面もあるけれど、(特に従来型の働き方をしている)社員の意識や価値観を変えてからでないと、彼らは今までの自分が否定されると感じて反発し、結局上手くいかない」ということでした。

一般社員も管理職も経営層も、とにかく意識改革と制度導入を上手にバランスをみながら取り入れていく、ということが大切なんですね。そして、まず誰の意識を変えるのか、そのためにどのような制度を導入するのか、といったことは、その企業個別に状況をみながら決めていくことが必要で、そのためにこの「タイプ分け」が目安としてあるのだと理解しました。

他に学生からの質問として挙がったのが、ワークライフバランス施策を導入した企業に発生する、俗に言う「女の敵は女」というものについてでした。これは…身近にも見かけます。

確かに、育休を取得する女子社員の仕事が他の社員に振り分けられると、振り分けられた方の社員が不公平感を感じたりだとか、短時間勤務で早く帰宅する社員の残した作業をする立場の社員が不公平感を感じたりだとか、そういった話は聞かれます。

先生によると、何故か育休や短時間勤務の女子社員の仕事は、残された「女子」社員に振り分けられる傾向があるのだそうです。これが第1の問題。そして、その残された女子社員というのが、結婚や出産を犠牲にしてキャリアを築いてきたタイプだったりした場合、特に不公平感が生まれやすく、この不公平感が第2の問題。

第1の問題については、無意識にそのような振り分け方をする管理職が多いので、まずその問題を自覚してもらって、徐々に修正して解決していく。

そして第2の問題に効く薬としては、最初の講義でも出たように「介護」の話を持ち出すのが良いと仰いました。多様性のある働き方を許容するというのは子持ち女子社員だけの問題じゃない、これからは「介護」によって長期休業をやむなくされる40代以上の(特に独身の)社員が現れてくる、という話をすると、男女や既婚・独身・子供の有無を問わず社員に当事者意識が生まれ、「自分も将来はこういう働き方になるかもしれない」と思うようになることによって、不公平感が解消するのだそうです。

人によっては、特に男性の目から見れば、この不公平感という問題はピンと来にくいものがあるように思えます。「仕事も結婚も子供も手に入れた女性」に対する「お局様」の僻みや嫉妬、という問題として受け止められている部分も多いように思えます。そのように伝える記事や報道もあるようです。このような見方をされてしまうと、男性はこの問題をより一層敬遠するようになるでしょうし、女性同士でも対立が深まってしまうことにもなりかねません。

この第2の問題は個人の意識の問題のように思われて実はそうではなく、従来の企業風土に根ざしているものなのだということ、ワークライフバランス施策の導入によって社員全員、ひいては会社全体が恩恵を受けるのだということを周知し理解させると、解決に効果があるのだそうです。

先程、自分が勤める会社をCタイプに分類した私ですが、男性上司が制度を導入して実際に利用実績もあるということに満足し、実際にその制度利用に付随して起こっている社内の問題に気付いていないというのは、自分がその制度を使うとしたらそれは一体使いやすい制度なのかどうか、利用者の視点で考えるというプロセスが抜けているからではなかろうかと思われてきました。

そして、このような上司に当事者意識を持たせるためにはやはり、(上司の方が私より2回りほど年上なこともありますし、)育児だけでなく介護の問題について伝えてみるのが、効果的な手段たりえるのかもしれません。

さて、次回の授業までの課題は、自分の会社の人事部(または総務部)に、自社のワークライフバランスについてヒアリングを行うこと、です。私的なことを業務時間内に行うわけには行きませんので、アンケート形式にしようと思っているのですが、ある程度回答の内容が予想できてしまうだけに、どのような質問事項を盛り込むか、知恵の絞りどころです。

ついでにさりげなーく、アンケート回答者を洗脳できたらいいなぁ、そんな質問の仕方にできないものかなぁ、なんて考えていますが、かなり難しい作業になりそうです。

例えば、残業が少ないことは事実だけれど、その理由として当てはまるものを回答させるとして、選択肢に
・ 経営陣が残業に係るコスト感覚に敏感だから
・ 管理職が残業に係るコストに敏感だから
・ 社員が全体的に残業に係るコストに敏感だから
・ 労働組合との決め事があるから
・ 残業は申請制になっているから
・ 残業をしないと評価が高くなる評価システムだから
・ 一斉退社日(ノー残業デー)を実施しているから
・ 人手が充分足りているから、または仕事量が減っているから

という(上司が「当てはまる」と回答するであろう)選択肢の他に、
・ 経営陣がコスト以外の残業によるデメリットを理解しているから
・ 管理職がコスト以外の残業によるデメリットを理解しているから
・ 社員が全体的にコスト以外の残業によるデメリットを理解しているから
・ プライベートの充実が良い仕事を生み出すと考えるから
・ 社員のタイムマネジメント能力が優れているから
・ 常に時間の無駄削減を「カイゼン」しているから
・ 女性社員の育児との両立支援のため
・ 男性社員の育児との両立支援のため
・ 女性社員の介護との両立支援のため
・ 男性社員の介護との両立支援のため

なんていう選択肢を設けてみる。

上司はコスト意識から残業削減を徹底させてはいるけれど、そしてそれはコスト意識が欠如しているよりかなりマシなのだろうけれど、それを前面に出して社員に押しつける形で実践しているので、反発心を抱いている人もあれば、本当に必要な残業が申請できなくて自宅に仕事を持ち帰る人もあって、逆効果になっている面があります。会社の都合を押しつけているのではなく、社員のためを考えての残業削減なのだという伝え方ができていれば、そしてそれを社員が理解していれば、仕事に対するモチベーションも違ってくるでしょうし、反発も減ると思うのです。

この選択肢を見たときに、「社員に理解させなきゃいけないんだ」って思ってくれれば…なんて望むのは…やはり無理が過ぎますね…。男性社員の介護との両立などというものも恐らく上司の頭の中には無いので、選択肢を見てその可能性に気がついてくれれば…そして「そういえば親の面倒を見るという理由で有休を取る男性社員が最近増えたなぁ」と思ってくれれば…

とまぁ、そのようなことです、洗脳って。。。

話は変わりますが、そういえば今日は「仕事と生活の調和推進事業」の仕分けの日でしたね。どうなったのでしょうか。初回の授業の時に先生が「お尻に火が付いている年金の問題が絡んでいるので、政府もワークライフバランス政策に乗り気」「でも政権が変わったらとりあえず全部待ったをかけられたみたいになってて」と仰っていましたが、これがその「待った」だったのでしょうか。結末が気になります。

by hemp-vermilion | 2009-11-17 23:44 | ワークライフバランス

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