再公表公報って何者!?
2011年 01月 09日
どんな記事かといいますと、
・ senri4000さんの部下である「若手2号君」が再公表公報を出願番号から
IPDLの「特許・実用新案文献番号索引照会」で検索しようとしたら
検索結果に公報番号が表示されなかった、
・ 相談されたsenri4000さんが調べたところ、酒井美里さんのblog記事に
行き当たった、
・ 酒井さんの記事には「一見、公報レイアウトなので、『公報じゃん?』
って思えるのですが、実は公報ではありません。」つまり日本の公報では
ないので、文献番号索引照会では出てこない、という説明がされていた、
というものです。
う~はしょりすぎてゴメンナサイ。詳しくはsenri4000さんの記事を読んで下さい。
話を戻しまして。
あ~これ~。
私は当時の上司に言われましたっけ、「再公表公報は公報じゃないからね」って、新人の頃に。ポカンとする私に先輩方があれこれと説明してフォローしようとして下さいましたが、その時は混乱するだけだったなぁ。
公報という名前だけれど公報じゃない?一体「再公表公報」って、何者なのでしょうか。
注)ここから先は特許にのみ関する記載をしていきます。
再公表公報の公報番号を見てみると、「再公表 WO @@/@@@@@@」と書かれてあります。ここだけ見てもすでにもう「日本の公報じゃない」感が漂っています。そのとおり、再公表公報とは実はWO公報、つまり国際公開公報なのです。
日本で発明が特許出願されると、特許法第64条により、出願から18ヶ月後には全て公開公報が発行されます(早期公開請求された場合や優先権主張している場合はもっと早い)。同様に、国際出願がされるとやはり18ヶ月後には全て国際公開公報が発行されます。国際公開公報の発行言語は現時点で10カ国語、英語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、スペイン語、中国語、アラビア語、韓国語、ポルトガル語、そして日本語です。国際出願が日本の国内段階に移行すると、日本語以外の言語で発行された公報(明細書)は日本語に翻訳され、公報として発行されます(特許法第184条の9)。これが「公表公報」で、その効果はほぼ公開公報と同じです(第184条の10)。
では、WO公報が日本語で発行された場合は?
実は第184条の9には、
特許庁長官は、第184条の4第1項の規定により翻訳文が提出された外国語特許出願について、特許掲載公報の発行をしたものを除き、国内書面提出期間(略)の経過後(略)、遅滞なく、国内公表をしなければならない。(注:カッコ書き省略)
とあってつまり、公開公報や公表公報と違って、国内で公報を発行しなければならない旨の規定が特許法にないんですね、日本に国内段階移行した日本語のWO公報って。
でも、国内で公報として発行されないということは、日本の人にとってその発明情報や法的状況情報はとてもアクセスしにくくなってしまうもの。だから、特許法で規定はなくても、サービスとして(元上司談)公表公報のようなものを発行してあげましょうということで、日本語WO公報が番号もそのままに日本国内において再発行されるのが、再公表公報というわけです。
再公表公報はベースとなる特許法上の規定がなく、オリジナルの文献番号も付与されず、単にWO公報を再発行し直しているだけなので、「日本の公報でない」という扱いでないのでしょう。文献番号が付与されないからIPDLの「特許・実用新案文献番号索引照会」では出願番号から照会することができず、でも発明情報や法的状況情報にアクセスできるように「特許・実用新案公報DB」には収録されている、ということなのだと思います。
ところで、再公表公報というのはサーチャー(ここでは特許情報にアクセスしようとする人、の意味)にとって大変有り難く、かつは面倒くさい存在だったりします。本当はこっちのほうがメインで書こうと思ったのですが、前段部分だけで結構な長文記事になってしまったので、また、次回の記事で書きたいと思います。
by hemp-vermilion | 2011-01-09 13:24 | 知財いろいろ