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再公表公報~その有り難くも面倒くさい存在

前回は再公表公報とは何者か、という記事を書きましたが、今回はその続き、サーチャーにとって再公表公報がいかなる存在か、ということについて書こうかと思います。

何のために法的根拠もない再公表公報がわざわざ発行されるかと言えば、それは前回の記事にも書いたとおり、日本の人がその発明情報や法的状況情報にアクセスしやすいようにするためです。日本で公報が発行されなければ、日本の特許データベース(IPDLも商用データベースも)に収録されず、日本でされた特許出願なのにもかかわらず、わざわざ他のデータベース(大抵はUIが日本語でない)を当たらなければならなくなります。

これは、日本で特許情報にアクセスしようとする人にとって好ましい状況ではありません。例えば製品の開発・製造・販売等を行うに当たっては、それらの行為が第三者の権利を侵害するものであるおそれがないかどうかを確認するために侵害予防調査を行う必要がありますが、この調査では通常「現時点で権利になっている」登録公報だけでなく、「将来権利化される可能性がある」公開系公報も調査対象に含めます。

このとき、再公表公報が発行されていなければ、当然データベースにも収録されず、従って調査から「漏れ」ることになります。侵害可能性のある他者特許は見つからなかったと安心して実施に踏み切った後で、日本語WO公報とともに警告書が送られてきた日には、泣くに泣けません。

WO公報を収録する他のデータベースも併せて検索すれば済む話、といえばそれまでですが、そのようなデータベースは日本の特許データベースより検索コストがかかったり、UIが日本語でなかったりします。あるいはデータベース作成者が、日本の特許文献だけでなく日本語WO公報も収録対象にするくらいのサービスをすればいいのに、という意見もあるかもしれませんが、データ収録に際して多大なコストが発生するので、それがデータベース利用料金に跳ね返ってくると思うと、簡単に賛成もできません。

といったことを考えると、単なる日本語WO公報の再発行というだけであっても、日本国特許庁によって所定の形式に則った公報が発行され、整理標準化データが整備されるということは、特許情報にアクセスする側にとっては大変に大変に有り難いことと言えるわけですね。

ただ、やっぱりそこは再公表(?)。ただ有り難いだけでは終わらず、実は少々面倒くさい存在でもあったりします。

通常、日本に出願された発明は出願から18ヶ月後に公開されます。国際出願された発明も、出願から18ヶ月後に公開されます。どちらも、優先権主張を伴う場合は、優先日から18ヶ月後に公開されます。が、日本で公表・再公表が発行されるのにはタイムラグがあり、時として出願日(優先日)から2年も3年もかかることがあるのです。

何か例として示せるような日本語WOを検索しようかな、と考えたら、ふと自分が過去にこのblogで紹介したことのある日本語WO公報の存在を思い出したので、それを例にとりますと、

2007年08月27日 特願2007-246124を出願
2007年11月21日 特願2007-246124を優先権基礎としてWO2007JP73002を国際出願
2009年03月05日 WO2009/028115が発行(発行言語は日本語)
2010年02月18日 日本に国内書面提出(特願2009-529960)
2010年04月27日 出願審査請求
2010年11月25日 再公表公報発行

国際公開は優先日から約18ヶ月後にほぼタイムラグなく発行されていますが、再公表公報の発行は、なんと優先日から3年以上経ってからです。この3年間は再公表公報発行の恩恵に与ることができないと思うと、せっかくの有り難みも半減してしまうような…

いやいや、それでも、過去全ての日本語WO公報を別途調べることよりは、直近の数年間の分だけを調べることの方が、よっぽど手間もコストもかからなくてよい、と私は思っています。

ただ、
・ 再公表公報の発行には大きなタイムラグがあること、
  (公表公報も同様)
・ 公開の効果は再公表日でなく国際公開日がベースとなること、
  (公表の効果は国内公表日ベース、[184条の10])
・ HYPAT-iデータベースでは「発行日」を条件指定するとそれは国内公報発行日
  (公表日・再公表日)を意味すること、
  (指定日時点で日本国内未発行でも公知文献たりうる国際公開が漏れる)
・ PATOLISで発行日を「PD」で指定すると、公開公報しかヒットしないこと、
・ PATOLISで発行日を「PDX」で指定しても、公表・再公表については公表日・再公表日を
  意味すること、
・ PATOLISでは国際公開日を「PDI」で指定できるがHYPAT-iでは国際公開日を指定する
  機能がないこと、

等々といった特殊な事情を飲み込めていないと、予想外の調査漏れを引き起こしたりする場合があるので、要注意!

と、再公表公報は、検索するのにかくもまぁ面倒くさい存在であったりするのです。

ワタクシとしましては、「年金たまご」が国内段階移行して審査請求までされているってことにビックリいたしました。しかも国内書面提出前に出願審査請求して却下されていたり。とっても権利化したいのね、きっと。。。

by hemp-vermilion | 2011-01-10 11:14 | 知財いろいろ

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