教科書的な基礎と応用 その2

昨日の記事では検索競技大会の結果についてあれやこれやと長々書いてみたわけですが、「お前の減点ポイントはそこじゃねーよ」と思われていたらどうしよう、とgkbrしている小心者のわたくしだったりいたします。

結局なにが言いたかったのかというと、
・検索競技大会の出題と日々の調査実務とは違う、
・基本ができるようになったら応用もしないとね、
ということです。
決して、
・テストで高得点が欲しかったら小学校の算数で代数にxを使ってはいけません、
などということではありません(笑)。

試験と実務が違うなんてことは誰に言われなくても当たり前のことで、弁理士試験のトップ合格者が実務での実力もトップとは限りませんし、学校で習って試験で出題されることと、社会人になってから求められることには違いがあるものです。

でも、だからといって勉強したことが実務で全く使い物にならないということでもありません。誰でも何でも、基礎をしっかり固めた上で応用をしていくことが大事なのです。そういう意味で、基礎がしっかりできているかを見る検索競技大会の出題は良くできているのかなあと思いました。

調査では、「基本」とされていることがいくつかあります。昨日の記事で書いた「発明特定事項の適切な切り出し」もそのひとつで、これは約2年前に書いた記事「特許調査で実は一番肝心(かもしれない)なこと」にも関連してきます。つまり、発明のポイントがどこにあるかを間違いなく掴むということが大事だということです。

その他にも色々とあります。私が聞いたことのある中では、
「IPC/FIでサブクラス以上が異なるもの同士のAND演算をしない」
「NOT演算は使わない」

というものです。

私の調査スキルというのは、新卒入社時に各ベンダーによる講習会でにデータベースの操作を習得し、その他はほとんど社内のOJTで先輩方や上司たちから教わって身に着けたもので、教科書的な勉強と言えばサーチャー試験対策に何か本を読んだくらいで(図書館分類法や、一次資料、二次資料、灰色文献とは何ぞやという勉強)、それが関係しているのかいないのか、実はこの2つの「基本」は数年前まで全く知りませんでした。しかしプロフェッショナルサーチャーではなくても、日常的に調査業務を行う人たちの中ではこの2つはどうも「王道」「基本」らしい、という経験をしたのが、INPITの検索エキスパート研修(上級)に参加したときだったのです。

研修の最初の2日くらいは座学でしたが、その後実習が行われました。実習は、各自が審査官になったつもりで審査官端末を操作し、検索式をたてて実行し、精読し、公報を抽出する、というものでした。先行例を抽出した後は受講者をいくつかのグループに分け、そのグループ内で
「自分はこういう式をたてた」
「この集合の中にこれを見つけた」
「それは自分の集合の中に入っていなかった、式のどこが悪かったのか」
「自分は見つけたけれど抽出しなかった、なぜかというと、…」
とう具合にメンバーと議論を行い、最終的にグループとして最適と考える検索式と引例とをグループごとに発表するのです。

そのとき課題であった発明の内容はもう全く覚えていませんが、とにかく複数の技術分野にまたがる内容で、関連するFIもセクションが異なるものが3つくらいあるものでした。

私はまず、その3つのFIをAND演算してみました。回答は0件でした。続いて、その3つのうちの2つをAND演算したものをOR演算してみました。

(FI1*FI2)+(FI1*FI3)+(FI2*FI3)

回答は8件で、その中にX文献(後の解説によりそれが正解(?)と判明)がありました。

もちろん、そこで調査が終わりになるわけではなく、続いてY1、Y2を探すことにはなるのですが、たくさんの式をつくってもYすらヒットしなかった人、ヒットさせるのにものすごい長さや数の検索式を用いた人、適切な分類を決められなくてキーワードだけで検索したらXがヒットした人など、グループ内で各自の結果を寄せ集めてみると様々な人がありました。私が最初につくったヒット8件の式でXにたどり着いたと言った時、グループ内では「へ~」という声が上がったのですが、それをグループの成果として発表したとき、会場からは不穏などよめきが…

そのうちひとりの受講者が手を上げ、
「そういうAND演算は虫食いになるからダメだって教わったんですけど。」
と講師に質問しました。そしてウンウンと頷く多数の受講者。私はこのときまで、これが邪道だとは思ってもみなかったので成り行きにびっくりしてしまったのですが、講師の方は
「これだけで終わりにしたら良くないです。たとえこの結果が100件、200件だったとしても、これで終わらせてはダメです。でもまぁ今回こうやって実際に見つかってますよね?まず試しにやってみるっていうのはアリです。」
というようなことを仰いました。それを聞いてホッと安心しました。

確かに、3つもの異なるセクションのFIをAND演算するのは、少し突飛なやり方かもしれません。少なくとも、教科書的には全く推奨されないやり方には違いありません。ですが、これは私なりに私の「基本」に沿ったやり方で、それは何かといえば、
「検索は多面的に行うべし。分類、キーワード、引例参照、適度に織り交ぜて、全体としてそれぞれの長所を引き出しつつ短所を弱めるように」
というものです。

つまり「最終的に全体的に見て必要程度の網羅性を確保できるようにするけれど、最初は複数のアプローチを試して精度の高そうな集合から精読してみる」ということ。

OJTですと、熟達した先輩方から基本と応用とをいっぺんに伝授してもらえます。基本書や教科書を読んで勉強するということをあまりせずに実務でばっかり調査を覚えると、こういうことになったりするのですね…

というわけで、今日の結論:

◆基本をおろそかにして邪道なテクニックを弄するのは感心できないけれど
 (きっと私はそのように思われたのだと思います)、教科書的基礎から一歩も
 離れないでいると結果として遠回りをするかもね。
◆基本は、なぜそれが「基本」とされているのかを自分なりに噛み砕いて、
 自分の中に「絶対に譲歩しない調査のポリシー」としての基本を構築しましょう。
◆自分が練り上げた調査手法が真実優れたものであったとしても、依頼者に
 それが伝わらなければ「邪道」と思われるだけなので、コミュニケーションと
 説明とは非常に大事。

今度は、NOT演算について書いてみようかな。
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by hemp-vermilion | 2013-03-29 21:19 | 特許サーチ

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