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前髪の教え

昨日、美容院に行って、こめかみに生えているうぶ毛のような髪にだけかるいストレートパーマをかけてもらいました。

わたしの髪は全体的にひどい癖っ毛で、長くしていた時は定期的に根本にストレートパーマをあてていたのが、4月にバッサリ切った時は
「今ストレートあてちゃうと、これからまた伸ばしていく途中で中途半端な長さになったとき、パーマをかけたくてもかかりにくくなってしまうから」
という美容師さんの言を容れてなにもせず、つまり半年以上パーマをかけずにいたのです。

そのまま我慢するはずだったのですが、前髪を含む顔周りの毛は殊に癖が強く、ただでさえ慌ただしい朝の時間帯に整えるのは毎朝非常に苦労するので、「こんなちょっぴりの毛にしかかけないのに通常のパーマ料金を払うのか…」という抵抗感をねじ伏せて施術してもらったのです。

髪質というのは「無い物ねだり」の最たるもののようで、根本が勝手に立ち上がってしまう前髪を、私自身は「額に下ろして流すいうスタイルができない」と嘆くのですが、「アイロンで巻いても逆毛を立てても寝てしまう」という猫っ毛の美容師さんは非常に羨ましがってみせました。

「だから私、オデコを出すのは諦めたんです。今まで一度も出すスタイルにしたことがないんですよ。お客様はオデコを出すのがお似合いですから、癖をいかして前髪にはパーマを当てずにおくのがいいと思います。」

それを聞いて思い出しました、子供の頃、母に言われた言葉を。

「美人の顔が髪で半分隠れてるのはいいけど、不美人がそれをやるとダメよ。不細工がますます不細工に見えちゃう。隠したくなるような顔だと思っても、そういう顔ほど、どんどん出したほうがいいんだからね。アンタはオデコ全開にしときなさい。」

母の持論というのは
「コンプレックスを隠そうとすると自分に自信が持てずにウジウジと後ろ向きになり、性格まで不美人になる。少々の不細工でも他人からの評価など気にせずありのままの自分を受け入れてのびのび振る舞えれば、元が不美人でも魅力的になりうる。今からオデコ全開にしていれば大人になってもオデコを出せるが、子供の頃から隠していると大人になってからオデコ全開にするのは敷居が高くなりすぎる。だから今のうちからオデコを出すようにしろ。」
というもので、それをそばで聞いていた祖母までが
「そうよ、そのとおりよ。オデコは出していたほうがいいよ。オデコを出しているだけで知的に見えたりするんだからね。」
と賛同したのです。

そのせいで、髪を伸ばし始めた小学校高学年の頃から後ろは解き流していても前髪だけはパッチン留めか、チャームのついたゴムで「ちょんまげ」にするか、あるいはヘアバンドなど使ってオデコ全開にするようになり、気づけばいつの間にか何もしなくても前髪は真下に下がらないようになっており、今ではオデコを隠したくても隠せないようになっているのです。

今にして思い返すと、子供の頃から親だけでなく祖母にまでこうもあからさまに
「アンタは不美人だ」
と面と向かって宣言された挙句、ご親切にも将来のための対策まで伝授されるというお節介を焼かれていたわけで、けっこうひどい仕打ちだったと思うのだけれど、当時の私は
「ふぅん、そんなもんか」
と思うだけで、特に傷ついたということもなく、ほとんど他人ごとのように聞いていました。

「前髪の教え」が功を奏したのかどうか、こんな顔立ちでもコンプレックスに苛まれるということもなく娘時代を過ごし、少々気に入らない部分はあっても概ね満足して、お化粧の技術も磨かれぬまま今に至っています。

ワンレングスにした長い前髪をかきあげる、そんな仕草に憧れた時期もあったっけ。。。

by hemp-vermilion | 2015-06-08 23:29 | わたくしごと(?)

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