<   2010年 07月 ( 2 )   > この月の画像一覧

実願平6-002917は2度登録される

※本記事のタイトル、「2つの登録番号を持つ実願」とどっちにしようか迷ったことは秘密です(なんだか洋画の邦題っぽい)。

前回の記事の補足として、サーチャー、出願人、代理人の3者会談の有用性について、特にそれを調査後に行う利点について記事を書かなければ書かなければと思い続けていたのですが、例によって暑さと湿気に負けたり、仕事が立て込んだり、娘が熱を出したりといったことが相次いで延び延びになってしまい、そんなことをしているうちに、先日、ちょっと面白いケースに出会ったので、それについて先に書いてみることにしました。

ある日、わりと件数の大きな集合を作ったときのこと。

何千件という特実の出願番号、公開系番号、登録系番号をリスト出力して眺めていると、登録番号はあるのに出願番号も公開系番号も空欄のレコードが。んん?登録番号は登録実案第3001717。ということは(3000001番以降なので)無審査登録制度以降の出願だから、公開公報が発行されていないのは良いとしても、出願番号が無いっておかしい。データのミスか!?と不審に思いながらリンクをクリックして登録公報を表示させると、登録公報にはちゃんと出願番号「実願平6-002917」が記載されています。

あれ、「実願平6-002917」?
それってさっきちゃんとリストにあったよね??

と見直すと、やっぱり!でも、あら?登録番号が違う…えぇ?これってどういうこと!?

まずは気持ちを落ち着けて、問題の2件の出願について公報を見てみます。

A)
実願平6-002917
実開平11-000048
登実3088730

B)
実願平6-002917
登実3001717

A)の公開公報とB)の登録公報の表紙には、それぞれA)とB)が実願平4-011211の分割であると記載されていました。ですが、A)の登録公報にはA)が分割出願である旨の記載がありません。何だかヘンな話だなぁ、と思いながら親出願とされている実願平4-011211もチェック。

C)
実願平4-011211
実開平5-072763
実登2526709

とりあえず3件の履歴をPATOLISデータベースでチェックします。relationコマンドで関連出願を調べると、確かにA)がC)の関連出願として出力されるものの、出願種別の欄には「分割」でなく「通常」とありました。そして、B)は関連出願としてヒットすらしなかったのです。それどころか、発行が確認されている登実3001717を「F RN=3001717」として検索してもヒットしません。ひとまずヒットしたA)とC)の履歴をチェック。そこからなんとなく分かったことは…

実願平6-002917が実願平4-011211を親出願として分割出願された。分割出願日が平成6年3月だったため、無審査登録制度により登録実用新案第3001717号が発行。が、よく考えてみると分割出願なので出願日が遡及するため、無審査登録ではない、ということで実開平11-000048が発行。その後、準特44条の要件不充足により分割出願と認められず、通常出願として扱われる。結果として、出願日が平成6年3月となり、やはり無審査登録ということで登録査定なしに登録実用新案第3088730号が発行。

包袋を閲覧したわけでもなく、これはあくまでも推測に過ぎません。自分では当たらずといえども遠からずってところだと思っていますけれどね。

面白く思うのは、各データベースがこういったケースをどのように収録しているのかが、データベース(とその提供者)によって本当に違うっていうところなんですね。データベースプロデューサ作成のデータ(PATOLISの場合はPATOLIS抄録や広域分類等、HYPAT-iの場合は昭和58年から平成5年までの公報全文データ等)は別として、特許庁提供データには、例え明白な間違いデータであっても手を入れない(つまり修正しない)、という方針のデータベース。基本的に修正はしないがそれが間違いであると明らかな場合にのみ修正する方針のデータベース。データベースプロデューサ側で確認をとった上でプロデューサの責任でデータを修正するデータベース。。。

データ修正の方針だけでなく、そのデータベースのデータ収録単位が「1出願1レコード」なのか、「1公報1レコード」なのか、といったことでも違ってきます。PATOLISで登実3001717がヒットしなかったのは「1出願1レコード」方式だから。

このような「ヘンな」レコードが見つかったとき、それは各データベースのポリシーやデータ構造の違いを認識する絶好の機会なのです。
[PR]

by hemp-vermilion | 2010-07-31 00:18 | 特許サーチ

今日は弁理士の日

今日の記事は、@benrishikozaこと独学の弁理士講座の管理人様からtwitterでのお誘い
「『7/1は弁理士の日!』弁理士の日に「弁理士とは?」をテーマに記事を書きませんか?」
を受けまして、私は弁理士でも受験生でもないのですが、逆にそういう立場から書かれる記事も物珍しかろう、という気持ちがおこり、賛同して記事を書くものです。(twitterハッシュタグは #benrishinohi です。)

同趣旨で記事を書かれている「知財ブロガー(?)」の方々のサイトURLのリストは、こちらにあります。

さて、とはいうものの、サーチャーにとって「弁理士とは?」というお題は少々とっつきづらいものがありましたので、「サーチャーと弁理士」というテーマで書いてみようと思います。

私にとって弁理士とは「チームの仲間」です。良い例えが見つかりませんが、弁理士が医師ならばサーチャーは技師や看護師といったところでしょうか。技師や看護師は自身もプロフェショナルでありながら、医師ををサポートし、患者のために働き、その3者に上下関係はありません(実はココがポイント)。私はサーチャーという存在も同様であると考えています。すなわち、サーチャーは文献検索・情報解析のプロフェショナルであり、弁理士をサポートし、クライアント(代表例は企業)のために働くということです。この3者がチームとして対等で議論できる関係と環境をつくることが、私の理想です。

ですが、実際には調査の依頼者が弁理士であれ企業であれ、
「調査お願いします」「かしこまりました」
  
「報告書です」「どうもありがとう」
で終わってしまう、つまり2者間で完結してしまうことがほとんどで、3者会談(!!)が実現することはまず無いのですね。

サーチャーが調査をし、報告書を弁理士が読み、今後の方針を企業に提案する。
サーチャーが調査をし、報告書を企業が読み、今後の方針を弁理士に相談・依頼する。
あるいは調査の前段階でも、
サーチャーが調査案を提案し、調査案(見積書)を弁理士が読み、企業に伺いを立てる。
といった具合に、2者どうしの間でことが運ぶパターンが圧倒的なのです。

サーチャーは報告書に調査で得たものの全てを盛り込もうとしていますが、調査全体をとおしての感触を伝えるのは至難の業です。弁理士に対しては面談などで綿密な調査報告を行ったとしても、それがそっくりそのまま企業に伝えられるとは限りません。サーチャーは弁理士からの質問に答えることはできますが、企業からの質問は弁理士づてに受けることとなり、また回答することとなります。これは効率的とは言えません。

私が考える3者会談を行うメリットは、まずこの「効率化・時間短縮」です。調査というものは、その結果に基づいて次のアクションを取るための土台のようなものです。調査結果が弁理士と企業の2者に同時に認識されれば、次のアクションをどう取るべきかの相談に早く移ることができます。

次に、ひとつのものを同時に多様な視点で見ることができる点です。3者が同じ調査結果を前にしていても、それがどのように見えているのかは3者3様です。もちろん意見がぴったり一致することもあるでしょうし、それはそれである意味喜ばしいことかも知れませんが、その場でふと交わしたとりとめもない
「今回の調査でおもしろい文献が見つかりましてね。解決すべき課題も着目した部材も本願と同じなんですが、本願とは全く逆の発想をしているんです。つまりですね…」
なんていう会話が、実はものすごく何かのヒントになったりすることも無いでもありませんし。「3人寄れば文殊の知恵」ではありませんが、3者がそれぞれの立場から調査について語り合うと、2者間では生まれなかったものが生まれる可能性もあります。同じひとつのものを違う立場から眺めて、違う立場からただ喋る、それだけのことでも、もしそれができたら、調査結果に対する満足度を高められるのじゃないか…と思うのです。

そうはいっても、「弁理士の手元で寝かせて今後の方針を立ててから企業に説明する方が良い」という意見もあるでしょうし、「3者で言葉を交わすことが、常に即、何かを生むことにはつながらない」というしごく当然のご指摘もあるかと思います。

でもね、一度、やってみていただきたいんです、3者会談。チームなんですもの。お互いに信頼しあって、把握している限りの知恵と情報を持ち寄って仕事することは、きっと良い結果を生むはず!

何だか最後は自分の願望を押しつけて(笑)、言いたいことを言うだけのまとまりのない記事になってしまいましたが、7月1日も残り40分となったので、これで勘弁して頂きたいと思います。うぅ、他の賛同者の皆様がすてきな記事を書いていらっしゃる中、はずかしぃぃぃぃぃ。。。
[PR]

by hemp-vermilion | 2010-07-01 23:20 | 知財いろいろ